足のニオイはワキのニオイと同様に不快な悪臭としてイメージされやすい体臭の1つですが、普段は靴でカバーされていて周囲に気づかれにくい部分です。そもそも自分の足のニオイがどれだけきついか気づいていない人も多く、どれだけ他の条件が良くても、足のニオイだけでネガティブな印象やマイナスイメージをもたれてしまう原因になりかねません。足のニオイの問題は体調悪化や病気のサインになることもありますので、異常が起こったときにわかるよう、常日頃からニオイ対策を考えていきましょう。
足のニオイが臭いというものは昔から一般的に存在している悪臭イメージの1つですが、実際に身近な人の足のニオイが臭かったとしても、自分から指摘したりアドバイスしたりといった行動はかなりハードルの高いものです。特に本人が自覚していない足のニオイが周囲の不快感を強めているケースもあり、オフィスでも潜在的な問題になっている可能性はあるでしょう。
例えば、2016年に大阪市のレッグウェア製造卸販売会社が20~40代のビジネスウーマンを対象として「男性社員の足のニオイに関する意識調査」したところ、職場で男性の足のニオイが気になった経験を持つ女性は全体の77%に達しており、どれだけ日常的に足のニオイや悪臭が問題になっているのか確認することができます。
また、一方で男性社員へ足のニオイを指摘できない女性も71%に上るなど、人間関係も考慮して難しい問題であることは否めません。
同社の調査結果では足のニオイが臭い男性に対して、清潔感がない、近づきたくない、周囲に配慮して欲しいといった女性の声も認められており、清潔感のある男性を目指す上で足のニオイ対策は不可欠であると再認識させられます。
足のニオイを自覚しておらず周囲から不快に思われている人が多い反面、実は自分の足のニオイを自覚しており、そのせいで靴を脱がなければならない場所へ行きたくないと感じている人が少なくない点も重要です。
事実、上記のアンケートでは「自分の足のニオイが気になったことがある」という女性の割合は71%になっており、足のニオイの問題については男性だけでなく女性にとっても対策やケアが必要なものであると分かります。
加えて、足のニオイによって周囲へ不快感を抱かせるかも知れないという不安がストレスになり、職場の付き合いとして飲み会へ参加する際にもお座敷スタイルの店には行きづらいといった人もいるようです。
そもそもなぜ足はニオイが発生しやすい部位になっているのでしょうか。実は足のニオイ成分には人にとって不快感や吐き気を催させる原因物質が含まれていることがポイントです。
足のニオイの原因物質として知られているものに「イソ吉草酸」という化学物質があります。イソ吉草酸は有機酸として存在している物質の1種であり、身近なところではお酢の仲間として考えると分かりやすいでしょう。一方、イソ吉草酸は「特定悪臭物質」にも数えられる独特の刺激臭を発する物質であり、人にとっては不快なものとして感じられることが特徴です。
酢酸などの有機酸は人の体内でエネルギー源として利用されている重要な物質ですが、その仲間であるはずのイソ吉草酸は体内でエネルギー産生を阻害する有機酸として知られており、通常は酵素の働きによって代謝されて有益な物質へ作り替えられます。
しかし足のニオイの原因となるイソ吉草酸に関しては、足に繁殖した雑菌(コリネバクテリウム属など)が汗に含まれた皮脂や足の角質などを分解することで産生しており、人の体内にある酵素では代謝・分解ができません。
イソ吉草酸は悪臭防止法で規制されるほど不快なニオイ物質ですが、足で大量に産生される理由としては、イソ吉草酸の産生に関与する原因菌が繁殖しやすいことが影響しています。
まず、足においてイソ吉草酸を産生するコリネバクテリウム属に関してはグラム陽性桿菌として同系統の細菌が100種類以上存在しており、脇の下や足の裏、足の指の間などに存在する皮膚常在菌であることが重要です。つまり、そもそも人の足の裏は悪臭を発生させやすい仕組みになっているといえます。
次に、足は普段から靴でカバーされていて通気性の悪い状態なのも問題です。加えて足は汗をかきやすい部位でもあり、足の裏でイソ吉草酸を産生する細菌にとって、湿度が高くて体温で温かくジメジメとしている環境は極めて繁殖に適しています。
さらに細菌は足に付着しているだけでなく、靴や靴下などにも伝播するため、例えば靴を脱いで足を洗ったとしても、同じ靴を履くと再び雑菌が増殖して悪臭を発生させるという悪循環を避けられません。
ニオイが発生する原因を考えると、足のニオイが特に発生しやすいタイミングも考えやすくなってきます。
長時間の移動や夏場の気温上昇などで足に汗をかいて靴の中が蒸れてくると、いよいよ雑菌が繁殖しやすくなり、イソ吉草酸の産生についても活性化されてしまうでしょう。
また、汗に含まれている皮脂がさらにイソ吉草酸の材料として雑菌に分解されていくという負のスパイラルが完成します。
汗に含まれている皮脂などが雑菌にとって餌となり、それが分解されてイソ吉草酸の産生が加速します。つまり足を洗わなかったり爪の隙間に垢が溜まっていたりして不潔な状態を維持していると、それは足のニオイが生まれやすい環境を守っているのと同じことです。
また汗や皮脂は特別な状況のみで発生するものでない上、どれだけ足を清潔に保っていても古くなった角質などが生まれてしまうことは避けられません。
体質として汗をかきやすい人は、それだけ雑菌の繁殖しやすい環境を作りやすい人であるため、必然的に足のニオイが強くなる可能性も高くなるでしょう。
もちろん汗っかきの人だからといって必ず足が臭くなるわけではありませんが、環境や可能性としてはケアを意識した方が良いとなります。
通気性の悪い靴や靴下を履いている場合、それだけ足が蒸れやすくなって雑菌にとって快適な環境に近づきます。また通気性の悪い靴や靴下は汗で湿っても乾きにくいため、その環境が長時間にわたって維持されやすいことも深刻です。
加えて通気性の悪い靴や靴下はニオイが外に発散されにくくなるため、内部でニオイ成分がどんどん溜まっていくことになり、靴を脱いだ時に一気にニオイ成分が放出・発散されて強烈なニオイになるかも知れません。
長期間同じ靴を履き続けていると、皮膚の常在菌であるコリネバクテリウム属などの雑菌が靴にも繁殖してしまい、もう足をどれだけ洗っても同じ靴を履くだけでニオイが生まれやすい状態になってしまいます。またコリネバクテリウム属はアルコールで簡単に除菌できないこともあり、消臭スプレーなどでは対処困難なケースもあるでしょう。
足の汚れや皮脂、角質などをきちんと洗い落とせていない人は、日頃から足のニオイを生み出す雑菌へ餌を与えているようなものです。
自分では足をしっかり洗っているつもりでも、実はちゃんと汚れを取れていないといったケースは少なくありません。
毎日ちゃんとお風呂に入ったりシャワーを浴びたりしていて、体も洗っているはずなのに、どうしても足のニオイが取れないと悩んでいる人も少なくないでしょう。しかし同時に、自分では体を洗っている「つもり」になっているだけで、実は足の裏や指の間まできちんとケアが行き届いていないという場合も多いのが現実です。
特にイソ吉草酸を産生する雑菌は足の裏や指の間といった部位に存在するため、足の甲だけを洗っても十分な効果は得られません。
また体を洗った後にきちんと拭かず、湿ったままで放置すると余計に雑菌が増殖する可能性もあります。
なお、本当に正しく洗っているにもかかわらずニオイが取れない場合、角質層よりも深部に住んでいる菌が原因になっていることもあるため、皮膚科医へ相談することも1つの手です。
足のニオイの原因物質としてイソ吉草酸が知られており、その産生に皮膚常在菌である雑菌が関係していることも科学的事実です。
しかし、人の体のニオイは他にも様々な原因物質によって発生しており、必ずしも雑菌やケア不足だけで足のニオイが臭くなっているとは限りません。
例えば足に水虫の原因菌である「白癬菌(はくせんきん)」が感染して皮膚の不快部分に侵食している場合、日常の洗浄やケアだけでは菌を除去することは難しくなります。また白癬菌は適切な治療をしないと周囲に感染が拡大するため、早めの治療が必要です。
その他、人よりも汗の量が多い多汗症といった症状でも体のニオイがきつくなってしまう可能性はあるでしょう。
多汗症はメンタル面で原因が生じている場合もあるので、不安を感じたら皮膚科や心療内科などへ相談してみるのも一つの手です。
ここからは病気の場合を除いて、日常的な対策やセルフケアとして足のニオイの改善を目指す方法を解説します。
可能な限り毎日きちんとお風呂に入って、足の裏や指の間まで丁寧に洗うことは足だけでなく全身のニオイ対策として重要です。
またちゃんとお湯で体を温めてリラックスすることでメンタル面でも緊張が緩和され、精神的にも良い影響を感じられるかも知れません。
足の爪はケアを忘れがちなポイントです。爪の間には皮脂や垢、汚れなどが溜まって雑菌の温床になりやすいため、手の指と一緒に足の指の爪についても意識的にお手入れを行っていきましょう。
体を洗ったり拭いたりした後は、必ず乾燥させるのが◎。間違っても濡れたまま靴下や靴を履かないように注意してください。また靴についても毎日同じものを履くのでなく、1日使った靴は乾燥させるといったローテーションを意識していきましょう。
汗の量が増えると原因菌も増殖してニオイが強くなっていくため、やはり定期的に汗を拭いて清潔な状態を保つことは欠かせません。
雑菌そのものを除去できなくても、汗を拭いて水分を取り除くだけでニオイ対策としては意味があります。
角質は足のニオイを発生させる菌にとって餌となるため、入浴時に角質ケアを行って古い角質を取り除いてください。
通気性の悪い靴や靴下は蒸れを加速させてニオイの原因につながるため、できる限り通気性の良いものを装着することが大切です。
靴に雑菌が付着してしまうと足をケアするだけではニオイを改善できなくなるため、例えば靴の素材として抗菌性の素材を採用しているといった商品を選択することも1つのアイデアです。ただし抗菌素材も表面が汚れていては効果を発揮できないため、日常的に靴の手入れも行いましょう。
1日歩いた靴は思っている以上に汗の水分を吸収しています。そのため同じ靴を連日で履かないようにすることは、ニオイ対策としてだけでなく靴を長持ちさせるためにも重要です。
なお革靴などであればニオイ対策のできるシューツリー(木型)などを購入して、帰宅したら靴の中に入れてケアするといった方法も役立ちます。
靴をケアすると同時に、靴下も必ず脱いだらすぐに洗濯して、雑菌の温床にならないよう気をつけてください。
体の汚れや雑菌へアプローチする商品として、専用の石けんやボディソープも販売されています。体質に合ったものを選び、足を清潔に保ちましょう。もちろんニオイ対策としてだけではなく、水虫対策としても石けんで足をきちんと洗うことは重要です。
ドラッグストアやコンビニなどで販売されている制汗剤やデオドラント剤、または靴用の消臭スプレーなどを利用するといった方法もあります。
ただし、制汗剤やデオドラント剤は使い方を誤ると香り成分が不快なニオイと混ざり合ってひどい悪臭になる場合もあるため、必ず自分に合ったものを選択してください。
また靴用の消臭スプレーも汚れなどの根本原因が改善しなければ十分な効果を期待することは難しいでしょう。
足の汗対策として靴の中に除湿剤を入れるといった方法も効果的です。ただし靴の中に異物があると歩く際に違和感が生じるため、除湿機能のある中敷きを使う、汗パッドをカットして入れるなど、ストレスにならない使い方を試してみてください。
実際のアンケート調査でも判明したように、男性の足のニオイに対して色々と不満やストレスを感じている女性は少なくない。現実と向き合うためにも、ニオイに敏感で美容意識の高いイマドキ女子の声を聞くことは大切だ。
Enaさん
(34歳)
足のニオイが気になって靴を脱ぎたくないなって考えてしまうのは女子も同じ。だからこそ、きちんと足のニオイのケアをできる男性は「人」としてちゃんとしているって思いますね。
ニオイの自覚があってもケアしないのは無責任に感じるし、「足が臭いのは当たり前」なんて開き直られると幻滅です。
ケイさん
(25歳)
男性の足のニオイがきつい時、その人に私からいきなり指摘できるかって考えたら、やっぱり少し難しいかも…。その後でたとえどれだけその男性が素敵に見えても、もうずっとその人のイメージは「足の臭い人!」になっちゃいます!
足のニオイ対策は男女関係なく、人とお付き合いする上でマナーだと思うな。
足のニオイに関する悩みは男性・女性に共通するものだ。ファッションに気を使う人ほど、身だしなみについて考える際に足のニオイ対策やケアにも意識を向けている。
そんな人の前で臭い足のニオイをまき散らしていれば、男性としての魅力だけでなく、最悪人としての信用を失う可能性もある。
病気の場合などは医師へ相談することも必要だが、まずは日頃の生活習慣やニオイ対策を見直して、臭わない足で清潔感のある男性への一歩を踏み出して欲しい。